こんにちは。
グラフィックデザインを中心にフリーランスデザイナーとして活動している楽大舎【らくだいしゃ】です。

このブログでは、デザインを生業として26年間生き抜いてきた中で修得したデザイナーとして生き抜くちょっとしたテクニックを紹介していきます。

今回は、デザインコンペにおいて私が実践している切り口の見つけ方や勝負どころの設定などの考え方のお話しです。

デザインのアウトプットのスキルというよりデザイナーとしての考え方のスキルアップに繋がる内容となっておりますので最後まで目を通していただけると嬉しいです。
題材として私が実際に昨年参加し採用となった小さなデザインコンペをベースにお話していきます。
※依頼主のプライバシー保護の観点から多少の脚色を加える事をご了承ください。

案件

●依頼主/地方の行政機関。
●内容/市内の事業者をサポートする市内事業者支援センター(愛称「ハブステ」)の開設に伴い、この愛称が広く周知されセンターを身近に感じ気軽に利用してもらえるようなオリジナルロゴマークの募集。
●愛称の意味/「ハブステ」は、ハブ=車軸を当センターにみたて、利用者が自転車のスポークのように四方に伸びていくイメージ。ステ=ステーション(駅)。
当センターが市内の事業者のハブステーションとなり事業者同士が混ざり合い、様々な色になって全国へ発信して行く為の役割を担うという意味を持たせている。
●募集対象/市内在住のデザイン事業者で○月○日までに参加意思書を提出した方。

以上が案件の募集概要です。
小さな規模のデザインコンペですが、フリーランスにとっては参加する以上は勝ちに行かなければいけません。コツコツと売り上げを重ねていきましょう!

では、何を勝負どころにして勝ち切ったのかお話いたします。
大きな柱として3つに分けてみました。

1.コンセプト
依頼主の弱点を見つけ、どうしたら克服できるかをデザインする。

市内事業者支援センター「ハブステ」は市内の事業者の相談業務、販路開拓、新商品開発、起業創業相談、セミナーの開催等が主な事業となります。
市内で事業を展開している人にしてみればありがたい行政サービスです。
事業者の抱える問題や不安などに対応してくれる場所として利用価値はあります。
ただ、市民側から見るとこのような支援センターの場合、「何を相談できて、何がわかるようになるのか」が見えずらいという弱点があります。
それは広報不足であったり、事業者がそもそも行政機関にあまり期待していないという背景がある事がヒヤリングからわかりました。
そこで、上記のような弱点を克服するためには「ハブステ」の見える化をしたロゴマークが必要だと考え、下記のコンセプトとしました。

「ハブステ」を見える化したロゴマークを開発し、地域事業者の拠点としてモノ・コト・ヒトを全国へ発信する。

考え方の雛形はテレビチャンネルです。「ハブステ」というメディアの中に様々な事業(チャンネル)があるという位置付けです。
このコンセプトに沿ってデザインを進めていけば「ハブステ」がどんなところなのか視覚的に発信できるロゴマークができるという考え方です。
今回のコンペではこの考え方を勝負どころとしました。

2.デザインコンセプト
わかりやすく事業を見える化し、親しみやすさをデザインする。

先のコンセプトをデザインに反映させていきます。
デザインコンセプトは…
事業の見える化し安心感のある親しみやすさをカタチにする。
です!

具体的には、事業内容が見えずらいという弱点を克服する!を勝負どころとして「ハブステ」の意味をロゴの中にアイコン化して組み込みました。基本ロゴのアイコンは繋がりをイメージさせるものとしました。「ハブステ」で人と人、人とモノなどが繋がる場所というシンプルでわかりやすいキーワード設定をしロゴマークに組み入れました。見た目は柔らかい印象を与えるアイコンとしました。これが次のデザイン展開においてもベースになります。
そして、ベースとなるロゴを事業ごとのアイコンと組み合わせて色分けして展開していきます。例えば、相談業務で言えば対面している人のピクトグラムをアイコン化し組み合わせるという事です。
また、タイプフェイスは作り文字でゴシック体をベースに作図しました。同一ルールで重心を下に持っていく事で文字を安定させ安心感を演出しました。
そして、そのアイコンから色とりどりの丸が広がっていく様子を加えロゴマークの完成です。

デザイン的な勝負どころは…
「ハブステ」の意味と事業内容という情報の多さを説明じみた硬いデザインではなく、ひとつのロゴマークとしてまとめるかというところでした。

3.見せ方
実際の使用場面へ落とし込む事でイメージを膨らませてもらう。

ここまでお話してきた通り、今回のデザインコンペは規模の小さい案件でした。
という事は依頼主の担当者さんもデザインというものに慣れていないという事です。
断っておきますが、決してこの案件を規模が小さいと舐めているわけではありません。
ただ、競合先や依頼主のことを把握していないと勝負どころをどこにするか変わってくるからです。
その意味で、時間的に制約が多かったのですが、できる限りのロゴマークの展開例を作りました。あとは、プレゼンの時にコンセプトを伝え展開していった時のワクワク感を伝えられるようなにデザインシートをまとめました。

見せ方の勝負どころは…
デザイン慣れしていない人へデザインの広がりを見せる。

まとめ

最後までお付き合い頂きありがとうございました。

デザインコンペはその規模により提案の仕方や提案がチームで行う場合などのデザイナーの役割などは様々になってきます。
しかし、勝ちに行くための基本的な考え方は大きく変わらないと思います。
依頼主の抱えている問題はなんなのか。川上に登って情報を集め依頼要件を紐解いてください。川下にいて流れてくる情報だけでは勝てるコンセプトは見つけられません。
コンペに勝ちきるために粘りづよく川上で情報を集めてください。
最後に、デザインを説明する時に自分のデザインを通すために依頼主の説得になっていないか、デザイナーは常に注意していなければいけないと思っています。